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唯一無二のデザイン家電で大手と差別化

唯一無二のデザイン家電で大手と差別化

激戦の家電業界に後発隊として参入
日々の生活に寄り添う”デザイン家電”で
大手家電メーカーとの差別化に成功

代表取締役社長 木地 好美様

売り上げ台数累計352万台の元祖シズク型加湿器「SHIZUKU」や、レトルト食品を温めるだけの専用調理器「レトルト亭」など、ユニークなデザイン家電を開発している 株式会社アピックスインターナショナル

同社は約20年前に家電業界へ参入。すでに大手企業がひしめく中、「既存商品を作っても意味がない。それなら自社ブランドを立ち上げ他社がやらないような商品を作ることが一番だ」と考えたのは、同社の木地 好美 代表取締役社長である。最初に作った商品は、その頃流行り始めた「ハロゲンヒーター」で、当時はガード加工を付けた商品はアピックスが初めてだった。

今回は、家電業界の名だたる大手を相手に材料やデザインに拘ることで商品に付加価値を付けヒット商品を生み出し続けている株式会社アピックスインターナショナルに注目してみた。  

商社を辞めて転職するも、親会社が自己破産

「もともとアピックスは親会社がパチンコ屋の景品商品の仕入れや卸を行う会社で、大手家電メーカーの仕入れや海外での商品調達も行っていました。当時私は商社に勤めていたのですが、その時のお客様の一人がアピックスの前身の会社にいた方で、そのご縁から商社を辞めてアピックスに就職することになったんです。

当時は、ありとあらゆる商品を仕入れしました。女性用のブランド商品だったり有名時計ブランドの海外仕入れだったり。ですが、その親会社が自己破産し、子会社が民事再生を出すという経緯がありました。

なんとかすべて完済させたものの、トップが抜けて、役員も全員抜けて、事業も縮小せざるを得なくなり、社員が35名から12名になりました。その時が一番つらかったし厳しかったですね。ただ、社員もそうですが、お客様との約束もあるわけです。我々を信頼して注文してくれているお客様のためにも諦めずに上を向いていかなければいけないと思いました。

しかし、売り上げも立ち、資金はあったものの銀行が与信を設けてくれませんでした。ですので、まず手形での取引をやめ、現金回収のみにし、費用を捻出しました。ですが、商売のボリュームが大きくなっていくと限度があるわけです。その時に銀行の信用状を受けてくれたのがアピックスの前身の会社でした。

商権については、商品は我々が作るけれども、その商権は別会社にあるという内容でしたが、会社を続けるためには協力を仰ぐしか方法はありませんでした」

社員を第一に考え、親会社との合併に同意

「その後、その会社の親会社から “合併してくれないか” という話がありました。最初は、なぜ合併しなければならないのかと断っていたのですが、その時に、同じ会社の役員でかつ商社時代の上司から “自分の我を張るな。社員の将来を考えろ” と言われたんです。

そう言われて、やはり社員にとっては安定する企業になったほうが良いだろうということで合併することにしました。非常に悩みましたが、残ってくれた社員のためにもどうにかして商売しなければいけない、存続させなければいけないという強い考えでした。

苦しいこともありましたが、その中でも楽しかった思い出ももちろんあります。毎日2時3時までみんな残って仕事をするんですよ。開発もそうだし、営業もそうだし、色々ディスカッションしながら、それが深夜までずっと続くわけです。その頃はみんな若くてやる気があったんですよね。なので、やはり企業が大きく安定していくことが社員にとっても一番ベターだと考えていました。

その当時が一番しんどかったけれど、振り返ってみると一番楽しかったように思います。 会社は社員が資本です。社員が頑張ってくれるから会社が存続できるわけです。だからこそ稼いだ分はしっかり社員に還元できるように親会社にも交渉しています。

モノを作る、商品を売るということは消費者満足が究極の狙いだという考えもありますが、私は社員を満足させた上に消費者満足があると考えています。一緒に働く社員が満足できる組織や環境でなければ、その先にいる消費者が満足できるモノづくりや売り方なんてできないと。社員は家族のような存在であり、それが会社の安心安泰につながるという考えは若い時から変わらず、今後も持ち続けていると思います」

少数精鋭メンバーで各部署と意見交換しながらより良い商品づくりに励む社員のみなさん

すぐに現れる類似品、購入方法の変化など課題を1つひとつ解決

「業界柄、コピーされることも真似されることも多く、開発メンバーがアイデアを絞って出した商品もすぐに似た商品が出てきています。本来であれば新しい商品にアピックスらしさを入れるのが筋で、そこに力を入れているとは言いつつも、正直な話、モノづくりは難しいもので、そんなにポンポンとアイデアが出てくることはなかなかない。

また、日本は特に海外に比べてコピー製品が出てくるサイクルが短いと思っているので、せっかく社員が想いを込めて作った商品なので商標登録などで自社商品を守ることも強化しながら、お客様にできるだけ長く愛されるロングセラー商品を目指して作ってきました。

この業界での経験も46年ほどになりますが、最初は実店舗の販売だったものがデパートや家電量販店で扱われるようになり、最近はインターネットで販売・購入するお客様が増えてきていたりと、家電の販売方法は実に変化が激しいと感じています。

ネタもとと契約した背景には、実店舗だけではなくPRなどを使って商品を知ってもらう活動を行わなければいけないと考えていたからです。今はスマートフォンなどで手軽にモノが買える時代じゃないですか。なので、そういった販売方法や販売ツールも時代の流れに乗って変えていかなければいけないと思っています。

たとえば、スマートフォンで購入されるお客様が多いので、商品の詳細部分や使い方などを静止画ではなく動画で見てもらえるように作成したりしています。これによって、使ってもらうイメージを具体的に想像させることにつながります。

より商品の使用方法をイメージさせられる実演販売もありますが、それだと興味のない不特定多数にしかアプローチできませんし、今のご時世なのか足を止めて見てくれる人が少ない気がして効率が悪い。動画であれば、そもそも商品を気になった人がクリックをして見てくれるのでとても的確です。興味を持ってくれた人が動画を見て「あ、こんな使い方ができるんだ」と新たに思ってもらえる。非常に効率的で有効なアピール方法だと考えています。

また、弊社の特徴として全社員が29名いる中で、そのうち営業担当が5名、開発担当が7名、品質管理担当が6名ほどで、営業担当が少ない状況があります。その理由は、開発に力を入れるのはもちろん、カタログや動画制作など商品をよく見せるものをしっかり作りたいという考えと、お客様に安全安心に使ってもらえる商品を作ることを大事にしていることが大きいです。法的な問題はすべてクリアしているのは当たり前で「安全」という面だけではなく、お客様から見て「安心」できる商品なのかも重要視しています」

効率よりもお客様の満足感。その想いがアピックス最大の強み

「弊社の商品は各シチュエーションに合ったデザインを心がけています。商品のデザインは良くてもその空間にポツンと浮いている商品だとお客様は扱いづらいと思うからです。そういう意味でも一つひとつの生活シーンに馴染むようなデザインをすべてイメージしています。シンプルかつ使いやすい機能にするため、スイッチを少なくしたり、実際に使う人を想い機能に拘っているのも特徴です。

開発担当者とのミーティングは定期的に行っていますが、最近は担当以外の社員の意見も募集しています。主婦目線の女性社員の意見も聞いたりしています。

一つの商品を作るのに、アイデアを出して開発して品質を確認して、お客様が安全安心に利用できるかなどを一通り確認、点検して世に出すまでに最低でも7カ月はかかります。調理家電であれば年間で4、5件は作るという目標はありますが、正直苦しい部分も多いです。やはり我々はすでに世の中にある商品を作るのではなく、新たに開発した商品を出していきたい。仮にもう出ている商品であっても、アピックスらしさを取り入れながら変化を付けていきたいと考えているので、余計時間がかかってしまうのです。

実は昨年から料理の専門家の方に手伝っていただいて、レシピも併せて提供しています。同業者の方からは、このレシピはどこで作っているのかと聞かれ、自社で作っていると言うと驚かれます。

以前スモークロースターを作った際には50アイテムのレシピを載せたのですが、レシピを作るにも自社の調理家電を使って実際に調理して検証しているのでとっても時間がかかりました。それでも、お客様の声を聞いてみたり、お客様が使いやすい商品を作るには必要な工程だと思っていますので、時間はかかっても今後も取り組んでいきたいです」

コロナ禍で需要が伸びたレトルト食品を手間なく温められる「レトルト亭」

自社ブランドの海外展開、グループシナジーで新たな市場を狙う

「当社のメイン事業は、オリジナル家電商品の企画・製造・販売です。企画開発は自社で、製造は海外工場で行っています。主に自社で直接販売し、OEM、通信販売なども行っています。約65%は親会社を通じて各家電量販店に卸しています。

次に多いのがOEM、ODMです。お客様から要望をいただき受託製造もしています。それ以外では親会社もオリジナル家電の製造を行っているので、その仕入れ業務及び品質管理を行っています。それと自社でのEC販売。

あとは、2020年から海外展開も始めました。自社ブランドに限りますが、海外の代理店を通じて中国、今年からは台湾でも展開をしています。ライセンス契約も交わしたので、将来的にはさらに展開先を増やしたいと考えています。

いわゆるグループシナジーといいますか、弊社は以前ギフト販売を行う会社や飲料メーカー、木工会社などのグループ会社のポジションをとっていたこともありました。それに特化して商品を作ることもあるんです。海外の工場を我々も実際に回って、家電商品とは別に木工商品を作ったりもしていました。そういう背景からアピックスの商品にも木製を取り入れてみたり、飲料メーカーに沿ってコーヒーメーカーを作ってみることもあります。

親会社が何度か変わってきた中で、その会社に関連する商品を勉強させてもらって作ってきたので、そういった部分は今日のアピックスブランドの商品に大きく役立っていると思いますし、そこでできた各メーカーさんとのコネクションは今でも強みとしています」

国内外を問わず認知されるブランドへ

「今後の課題としては、アピックスとしてのブランド、商品を多くの人に認知していただけるようなモノづくりをしなくてはいけないというのが、いわゆる商売としての考え方です。

それともう一つは、社員を満足させるための会社づくりをしなくてはいけないということです。

当然、今は昔のような終身雇用ではないけれども、良い企業、働きやすい環境の企業として社員の定着率も高めていかないといけないと思っています。それはやはり商売とリンクしていると思うのです。良い商品を作って、会社が潤って、社員にも還元していくという形。社員が働きやすい環境作りを経営陣はしっかり考えなければいけないと思います。

そして最終的には国内や海外を問わず、どこへ行ってもアピックス商品が使われている、広く認知されているというのがメーカーとしての目指す未来です。

個人の会社であれば私の独断で社員に還元することができますが、子会社となると他の会社との関係もあって色々と思うようにいかないこともあります。ただ、そのような中でも社員が満足する経営、これに尽きると思います。なので、社員のみんながこの会社で働いてハッピーだなと思ってもらえる会社を目指していきたいです。

言ってしまえば、この会社を卒業して次のステップに行くとしても、それはそれで構わないと思っています。ただ、卒業しても良好な関係で、また何かあれば一緒に仕事ができればという感覚は持っていてほしいなと思います」


大手家電メーカーがすでに君臨する業界へ後発隊として参入した株式会社アピックスインターナショナル。独自性のある商品開発が企業存続の鍵となる中、苦労して絞り出したアイデアをすぐに真似されようとも、時代の変化が加速しようとも、歩みを止めることなく前進し続けている。

「社員を幸せにしたい」「お客様に喜んでほしい」という木地 代表の想いがある限り、これからも唯一無二のアイデア商品を世に送り出してくれることだろう。


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