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どこまで進化?日本初の餃子

どこまで進化?日本初の餃子

既成概念を覆す「日本初のギョーザ」
具材、味、購入場所、安全性
妥協を許さない信栄食品の進撃

「プロテインを餃子に置き換えられたらどうだろうか」

そんなユニークな発想から誕生した商品が、餃子の製造に特化した食品メーカー 株式会社信栄食品 の『MUSCLE GYOZA ~マッスルギョーザ~』だ。

信栄食品は、代表取締役の神倉 藤男氏が、1998年に父親が経営する会社の事業の1つであった「餃子事業」を引き継ぐ形で設立。長野県松本市を拠点とし、首都圏を中心に全国のスーパーマーケットをはじめ、量販店や飲食店、産業給食、通信販売など、様々なかたちで品質と安全に徹底的にこだわり独自開発したユニークな餃子を消費者へ提供している。

オリジナル商品『マッスルギョーザ』は、餃子の既成概念を覆す、低カロリー、低脂質、低糖質、高タンパク質の冷凍餃子で、現在までにシリーズ第6弾まで発売している人気シリーズだ。今年3月には、信州松本の伝統野菜「松本一本ねぎ」を使用した『MUSCLE GYOZA ~マッスルギョーザ 松本一本ねぎ~』を新たに開発し、自社ECサイト・Amazon・楽天にて予約販売を開始するなど、その進化が止まらない。

同社の神倉代表は、なぜ、日本初となる、餃子に特化した食品メーカーを創業したのか。
どのようにしてユニークなオリジナル商品を続々と生み出しているのだろうかー。

父の会社から「餃子事業」を引き継ぎ独立

代表取締役 神倉 藤男氏

高校を卒業後、食品総合商社(現在の株式会社日本アクセス:伊藤忠商事系列2021年度国内食品商社売上日本一)に入社しました。

ここでは、大手食品メーカーから中小食品メーカーまで1,000社以上の食料品1万点以上、3温度帯(ドライグロッサリー・チルド・フローズン)を取り扱い、「食品の基本から応用」に至るまでを徹底的に勉強しました。

高卒で社会に早く出たことを強みにするために人生で最も勉強したのも、この時期だったと思います。

各食品メーカーの方の仕事は、私たち商社の営業マンに対し、いかに自分達の製品をたくさん売ってもらえるかです。そのため、さまざまな販売促進の提案やプレゼンを各メーカーから山ほど受け、製品への問い合わせについても親身に丁寧にレクチャーしてもらったことで総合的な食品のバランス感覚を養うこともできました。

商社に3年間在籍した中で蓄積したノウハウとともに、父の経営する会社へ営業職として入社しました。

父の会社では、地元の特産品であるこんにゃくをはじめ、さまざまな食品を扱っており、その中に「餃子」もありました。これが、ビジネスでの餃子との出会になります。このとき、食品事業の開発から製造・販売までの一連の流れを学びました。

その後、国内最大手の食品会社がアメリカで全米向けの餃子の生産と販売を行うプロジェクトに大抜擢され、2年間携わりました。そのおかげで、大手メーカーの餃子作り、海外での販路開拓、さまざまな人種と働くための労務環境を学び、グローバルな視点を身につけることができました。

帰国後も、父の会社でずっと「餃子事業」を担当していたのですが、1998年、自然豊かな長野県松本市で餃子製造工場を確保できたことを機に、「信州松本の地で餃子に専念してやってみよう」と思い立ち、株式会社信栄食品を創業しました。

父が「食品事業」を退くタイミングで引き取った「餃子事業」ですが、 餃子は、年齢問わず子供からお年寄りまで食べられますし、おかずにもなれば、つまみにもなる、とても使い勝手のいい食べ物です。テーブルのメインを飾ることも、サイドメニューにもなり得るし、1人でも、大勢で餃子パーティーを楽しむこともできますよね。そのようなことから、餃子に専念してみようと思いました。

後発の信栄食品には「尖った発想」が必要だった

通販事業に参入した当時、すでにネットで餃子を販売している企業が何百社もあり、そこに後から参入したところで、信栄食品のサイトまでたどり着いてくれるお客様が何人いるだろうかという想いがありました。

当時のサイトからの売り上げは10万円にも満たない状況で、興味本位で10年ほど前に一度、楽天に出店したこともありますが、売り上げは上がらずやめてしまいました。その時に、「同じようなものを右にならってやってもダメならば、ちょっと変わった切り口でいこうか」と考えるようになったんです。

コアな人たちをターゲットにするのもそうですし、ネーミングを尖らせるなど、いろんなアイデアを考える中で「マッスル」という言葉が頭に浮かび、その頃、テレビでも流行っていたこともあって『マッスルギョーザ』というネーミングにしました。

「餃子を食べて身体づくりができるようになれば」と意味づけたのですが、商品の特徴であるタンパク質や低脂質、低カロリーという中身の前に、先に『マッスルギョーザ』と名付けた後で、「じゃあ、マッスルと呼ばれる人たちは、実際どういう食生活をしているのか」ということを考えました。

身体づくりをしている人たちは、脂質を気にしたり、タンパク質をたくさん摂ったりなど、「プロテイン」が主流だったので、「プロテインを餃子に置き換えられればどうだろうか」と思いついたわけです。

始めは、プロテインに置き換えられる餃子があればと、その市場をターゲットにし、そこから水平展開し、どんどん年齢層やジャンルを広げていけるのではないかと思いました。

大人気のマッスルギョーザシリーズ。現在は第6弾まで発売

家族との経験と、他社との差別化が起点に

『マッスルギョーザ』を販売し始めてから、私自身も身体のことを気にかけるようになりました。プロテインも飲んでいましたし、子供が大学までずっと野球をやっていたので、プロテインは私の生活においてもとても身近なものでした。

ただ、子供はあまりプロテインが得意ではなく、特にホエイプロテインは苦手でした。飲み物ではなく食べ物でプロテイン同様の栄養を摂ることができれば、それはかなり良いなと。

プロテインは、今はずいぶん味も改良されて飲みやすくなりましたが、食べ物に比べれば、やはりプロテインはプロテイン。 そこで食品会社として、ただ単にプロテインのパウダーを入れるだけでは平凡で面白みがないので、「食品会社ならではの餃子の具材の中からタンパク質源を抽出し、素材にこだわったもので販売できれば、他社メーカーと差別化ができるのではないか」という着想でスタートしました。

年間100種類を開発する中、お蔵入り商品も多数

簡単な配合であれば、すぐに真似できてしまいますが、当社の『マッスルギョーザ』の具材には本当にいろんなものが配合されており、拘って作られています。この組み合わせを複雑にすればするほど、他社が真似できないという部分にも着目していました。

現時点で第6弾まで『マッスルギョーザ』を発売してきましたが、第1弾はすべて私が配合しました。

OEMメーカーなので、お客様から「こういう風に作ってほしい」と依頼があれば、最短一週間程度でお戻ししなくてはいけないのですが、第1弾は、約半年の歳月をかけて完成させました。特に成分の検証や分析データの検証には最も長い時間がかかりました。

当社では年間におよそ100種類の餃子を開発するので、世に出ないままお蔵入りになってしまうものも数多くあります。ですが、それらのレシピ(配合)も全て私たちの引き出しの中にストックされていくので、お客様によっては以前作った配合をブラッシュアップしてご用意できるものもあります。

ファッションでも、何年かの周期で再び同じトレンドが来ることがありますが、餃子も同じですね。

大手食品メーカーもプロテイン入り餃子にトライ

過去の大きな実績として、2年で5万4000食を販売したことがあります。成功の秘訣は、やはり他社にはない「業界初の商品だったこと」だと思います。

その証に、昨年2021年に大手食品メーカーがプロテインが入った餃子を発売したんです。大手企業が新商品を世に出す場合には必ず市場調査をしていますので、先発の当社とは異なる、市場に出ていない商品を出したかったはずです。結果的には、打ち上げ花火的なかたちで終わってしまったようです。

これまでだと、身体に良かったり、身体のことを第一に考えた商品の場合、味は二の次と考える企業が多かったと思います。近年は、その考えが、次第になくなってきたように感じます。

「マッスル」と呼ばれる身体を鍛えているボディビルダーのような方々は、汚い言葉でいうと、食べ物のことを「餌」と呼ぶんです。なぜ「餌」かというと、要は身体をつくるために自分たちが我慢して食べるものだからなんです。毎日、同じものを食べていたら美味しくも感じないですよね。そういう面からも、今後は意識を変えていってもらいたいな、美味しいものを食べて身体作りができれば嬉しいなと考えています。

トレンドを先取りし、常に飽きさせない商品づくりに注力

昨年よりスタートした「餃子自販機」

どんなことでも、まずチャレンジしてみる精神が成長につながっていると思います。現在は「機能性表示食品と呼べるマッスルギョーザ」を開発中です。これまでの顧客とはまた違った層のお客様にアプローチできると思います。

昨年からは、「冷凍餃子の自動販売機」もスタートしました。自動販売機は、お客様にとっては手軽に買うことができて使い勝手がいいし、冷凍保存できるというメリットがあります。高齢化社会が進んでいく中で、一つの品物を買うためにレジに並んだり、スーパーに出向き店内を動き回らなくてはいけないことが、だんだんと億劫になってくるのではないでしょうか。今後、自販機がコンビニのような役目になっていくといいですね。

自販機の設置は、お客様がたくさん集まる場所だけではなく、意外なところでは、お米の精米所に置いています。お米と餃子はつきもの。お米を精米に来た方に一緒に餃子を買ってもらうことに繋がっています。餃子を身近な場所で手軽に買える存在にしたいという想いがあります。

これからも、食のトレンドをいかに先取りしながら、お客様が飽きずに新しい商品を試し続けることができるか、その仕組みづくりをしていきたいと思っています。 実際に、雪が多い長野県で、雪中キャベツを使った餃子が大ヒットしました。そういった季節感も取り入れながら、自販機の中で展開できればいいですね。

様々なニーズにこたえることで社会へ貢献

私たちは、お客様向けのOEM製造を行っているので、四季折々や身体に配慮したもの、今のトレンドに合わせたものなど餃子のレパートリーが多く、いろいろな餃子を作っているからこそ、様々なニーズにこたえることが可能だと思っています。

実は、ちょうどいま最終的な商品開発が終わり、新商品として発売を開始した「減塩野菜餃子」があります。
※当社の商品「野菜餃子」と比較して塩分45%カット(餃子1個当たりの塩分0.1g)

高血圧の方々や、ご高齢の方々は、食塩の摂取に非常に気を使われていて、食事制限されている方もいます。そういった方でも、塩分を気にせず餃子を食べられるよう、配慮した餃子となっています。

今後も、お客様の生活の中で当たり前のように寄り添える存在の商品でありたい。そう願っています。現在は長野県近郊に31台の自販機を設置していますが、今年度、最終的には50台は県内に置きたいと考えてます。

信栄食品が目指す、これからの未来とは

「食べることは楽しいこと」です。 それは、これから5年後、10年後、20年後もなくならないと思っています。

サプリメントが出始めたころ、「食事がすべてサプリメントに置き換えられるのではないか」と言われていましたが、サプリメントを食べても笑顔は生まれないけれど、美味しいものを食べると笑顔になれるじゃないですか。それは今後も変わらないし、決してなくならないと思います。

私たちは餃子メーカーですが、食品を提供する立場で、自分たちが提供しているものにどれだけ磨きがかけられるかが重要だと思っています。それと「安全性」。食の安全性をいかに拘れるかかが大事だと思っています。

社会が高齢化するとともに、食品の衛生管理もさらに厳しくなります。高齢者になればなるほど、食品の事故に対して非常に重篤な状態になってしまいます。この部分を一番に掲げ取り組むことでお客様からの信頼を勝ち取ることができると考えています。

それと、ちょうど今年、新たな工場ができるんです。それができた暁には、完全週休二日制にし、働く方々が土日確実にお休みがとれる状態にしたいと思っています。

さらには、作業をある程度自動化できるようにしたいとも考えています。働く場所もそうですし、休憩するスペースもそうですし、少しでも働く方が働きやすい環境になるよう、お客様だけではなく、働く社員のケアもしながら、有望な若手の人材も取り入れ、未来永劫やっていきたいというのが私の夢というか希望です。

私にとって餃子とは「人生そのもの」ですね。

新商品の企画会議をする信栄食品の社員のみなさん

「おかずの1つ」という、これまでの「餃子」のポジションを大きく変え、新たな餃子市場を創造し、今なお社会問題の解決や顧客の意向に沿ったオリジナル餃子を開発し続けている信栄食品。

「信じて、努力を積み重ねれば、自ずと栄える」

同社の社名は、神倉代表のそんな思いが反映されているのではないか。

信栄食品が進化の歩みを止めないかぎり、私たちは、今後もその恩恵にあやかり続けることができそうだ。


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