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失敗と挑戦で得たブランド価値

失敗と挑戦で得たブランド価値

大幅値上げで既存客の大半を失客。
あれから3年。ブランド価値を高めるために
カワニシが選んだ復活への途

川西功志 代表

私どもの商品は、カバンではなく、”カバン作り”です。
職人一人ひとりの仕事が商品だと考えています。

こう、公言するのは、 株式会社カワニシカバンプロダクトの川西功志(カワニシ アツシ)代表 。

「職人たちにスポットライトが当たる環境をつくりたい」という想いを2020年12月11日ついに実現。職人がカバンをつくる様子が見られる工房とカバンを直販するショップを兼ね備えた「ファクトリーショップ」を香川県高松市にオープンさせた。

オープン当日は、予想以上のお客が訪れ、地元紙でも大きく取り上げられた。

今では「カバンをつくる人の想いや魅力」を伝えることでメーカーとしてのでブランド力を高めている同社だが、商品価値を高めようと考え挑戦した「商品の値上げ」により、2017年4月には、顧客の大半を失う事態に陥った。

あれから3年。カワニシカバンはどのような取り組みにより復活したのだろうか。

夢だった古着屋を諦めカバンの下請け工場へ転身

株式会社カワニシカバンプロダクトの川西代表の経歴はユニークだ。

香川県立高松工芸高校の機械科を卒業後、自動車整備士、訪問販売、ホームページ作成の営業、古着屋店員、webデザイナーといった異業種を複数経験。

カバン工場の生産管理兼職人となったのは、彼が26歳のときである。

2012年には、カバン工場の仕事が少なくなったため、かねてからの夢だった古着の販売店「古着屋cheese(チーズ)」をオープン。

しかし、2014年頃からカバンの仕事が多くなり、徐々にカバンの製造の下請けの仕事が増加。

2015年、屋号を「カワニシカバンproduct」に変更し、古着屋を諦めカバンの下請け工場として転身。2018年に株式会社カワニシカバンプロダクトを設立した。

カバンの下請けだった創業時の工房

ブランド価値を高めるための値上げで顧客の大半を失う

独立して2017年の3月までは、非常に仕事もあり、順調に進んでいました。

けれど、2017年4月に急に仕事が全くなくなりました。

原因は、値上げです。

それまで、ずっと安い金額でカバンを作っていましたが、初めてパートさんではなく社員さんを迎えるにあたり、今のままの売上や利益では、社員さんを養ったり、会社の成長はないのではないかと考え、大幅な値上げに挑戦しました。

完全にそれが裏目にでてしまい、それまでの仕事が全くなくなってしまいました。

当時、職人たちとともに毎日毎日、生産に追われる日々を送っていた川西代表だが、ある日、スタッフの一人にこう言われたそうだ。

「旦那に、お前は楽な仕事していいねー。って言われたんや…」

そのときに「悪いのは旦那さんじゃなくて、無名なカワニシカバンじゃないか!」と気づき、まず行ったのが、 価値を高めるための「加工代の値上げ」だったという。

だが、それが要因で常連客のほとんどを失ってしまったのだ。

再び値下げをし頭を下げて仕事をもらうか、別の道を選ぶか

仕事がなくなってしまったあと、再び値下げし頭を下げて仕事をもらうか。
それとも、別の道を選びチャレンジするか。

悩んだ結果、川西代表がとった道は、値下げはせずに自分たちの価値を高めていく道だった。

「技術と人間性」を大事にする職人たちが真心こめて製作

「値下げをすることで、自分たちの価値を下げてしまうのではないか」と考え、いろんな勉強をして自分たちの価値を上げる道を選びました。

そこでまずチャレンジしたのが、クラウドファンディングです。

1回目のクラウドファンディングでは、50万円の目標をなんとか100%達成しました。

この頃から徐々に自社の商品を一般のお客様に販売するようになりました。

2回目のクラウドファンディングでは、「防弾チョッキの素材で作ったビジネスリュックseow(セオ)」で、500%250万円の資金を集めることができました。

当時のことを振り返り、川西代表はいう。

「私は、お客様を変えたのではないかと考えています」

それまでの顧客は企業とのビジネスが多かったため、納品後の電話のほとんどがクレームだった。

それに対し、クラウドファンディングで得た一般のお客様からの電話は、ほとんどがお礼の言葉で、その違いに驚いたという。

さらに、より多くの人に知ってもらうためにSNSの活用や、自社ホームページを作り、カワニシカバンブランドの商品販売も開始。

こうして、少しずつ、着実に、多くの人にカワニシカバンブランドを知ってもらうきっかけを作っていった。

挑戦の先にあったのが「工房&ショップ」のオープン

そういったチャレンジの先にあったのが、実際にカバンを作っている様子をお客様に見てもらえるショップをつくることでした。

2017年に仕事がなくなってから、いつか実現しようと今までやってきました。

あれから約3年がたった2020年12月、ようやくその夢を実現することができました。

オープン初日の店内は来店者で大賑わい
ショップ内にある工房で作業する職人たち

カワニシカバンプロダクトの今後の挑戦

私どもカワニシカバンプロダクトの商品は、カバンではなく”カバン作り”です。

職人さん一人ひとりの仕事が商品だと考えています。

だからこそ、職人さんにもっとスポットライトが当たるような環境づくりを目指しています。

それを実現するために工房兼ショップをオープンし、You Tubeやその他SNSを使用し自社の取り組みを配信しています。

いいカバンをつくるのは当然。

そこから少しでも多くの人に知ってもらって、使ってるカバンを自慢してもらうことが何より大事だと考えています。

自慢できる場所、自慢できるカバンを目指して、今後も製作に励んでいきます。

川西代表と全員職人のスタッフのみなさん

現代社会は、すでにモノで溢れており、必需品はすでに飽和状態にある。

そのような中、機能性や素質の違いで他社製品と差別化するのは極めて難しい。

カワニシカバンプロダクトは、カバンを作る職人である「人の想いや魅力」を世に伝えることで、他社との差別化を図り、復活を遂げた事例といえる。

“100年後のビンテージを作る”を経営理念に掲げる同社の商品「familiar(ファミリア)」シリーズは、「家族をつなぐ丈夫なカバン」というコンセプト。

お父さんでも使える、ママバッグ。
お母さん、娘さん、おばあちゃんが順番に使えるバッグ。
お父さんと息子さんが取り合いをするバッグ。

このような想いこそが、他社にはないカワニシカバンだけがもつオリジナルの魅力といえる。

川西代表が失敗と挑戦の中から学び取った「つくり手の想いを伝える」という情報発信術は、これからの広報PR活動の在り方の見本と言えそうだ。


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